第1回研究会の開催(2020年11月15日)

最終更新: 3月24日

【会の概要】

2020年11月15日(日)13時より、国際開発学会(JASID)研究部会は、第1回「ODAの歴史と未来」研究会をZoomで開催しました。まず、東京大学東洋文化研究所の佐藤仁さんが研究会設立の経緯と趣旨を説明し、問題意識の共有を行いました。続いて、司会進行を務める九州工業大学教養教育院の大山貴稔さんが今後の研究会の進め方を提案しました。その2つの発表に対し、計16名の参加者は会の方向性や具体的な研究内容をめぐってフリーディスカッションをしました。

【佐藤仁さんの報告概要】

佐藤さんは、「発展・開発・援助学の国籍問題」というテーマをもとに、日本における開発学の起源を日清戦争からひもときながら、本研究会で開発を論じる意義と視点を示しました。日本の歴史からみると、「発展学」は近代化という現象の説明に基づく社会変化の理論であるのに対して、「開発学」は南北格差に動機づけられた介入の理論だと考えられます。このような日本の歴史的文脈を素材に、欧米主導の開発学と異なる学問のあり方を掘り出すことは、発展・開発・援助とそれに携わる私たちの知的作業を見直す機会となることが指摘されました。さらに、佐藤さんは『ペリー提督日本遠征記』を引用しながら、今日の私たちにとって、異なる時空の人間社会を照らし合わせて「驚きの素材」を洗い出すという姿勢の大切さを論じました。研究会の議論を深めるにあたって、経験的独自性と学問的普遍性の緊張関係や、開発を議論する主体とアプローチの多様性などは今後の課題として挙げられています。

【質疑応答の概要】

参加者は佐藤さんの問題提起に対して多様な角度から関心を示しました。質疑応答では、事実確認を含め、開発学を論じる際の難しさや注意点が多く挙げられました。それらの意見を以下の5点にまとめることができます:

  1. 日本の開発学の起源とは何か →植民地統治に特定する妥当性;

  2. 開発学をdisciplineとして論じる難しさ →「〇〇学」と呼ぶ条件や、地域研究をはじめとする他分野との関連性の整理;

  3. 欧米と比べた際に見えてくる後発者としての日本の開発学の特徴と強み;

  4. 国柄や地域の文脈に依存する開発知を普遍的なものとして訳す可能性 →「開発・発展」(development)とそれに関連する概念(e.g.進化、拓殖や近代化)の整理;

  5. 開発を論じるためのアクター(e.g.NGO)の取捨選択;

参加者の質問に対して、佐藤さんは開発に関連する概念整理の必要性に同感した一方、開発学の成りたちについて、伝統的な学問分野の間に開発学の居場所を探るのではなく、開発学を特定の分野を超えた現象や問題に正面から向き合うためのアプローチとして積極的に活かすことを主張しました。

【研究会の今後の方針】

大山貴稔さんは、日本に散り残ってきた開発知が学問的に取り込まれてこなかったことを問題視し、開発知を再構築・再認識するための手がかりとして、日本で開発をめぐる多くの知的貢献を残してきた人物を対象とするオーラルヒストリーの作成を研究会の活動として提案しました。また、その作業を具体的な研究成果としてまとめる見通しやその意義を示しました。それに対して、複数の参加者はオーラルヒストリーの提案を賛成すると同時に、インタビュー対象者の選択、その目的と具体的な方法論を検討する必要性を述べました。次回の研究会(2021年1月開催予定)では、下村恭民さん(法政大学名誉教授)の新刊『日本型開発協力の形成 政策史1・1980年代まで』をめぐるディスカッションをはじめ、オーラルヒストリーの方法論についての議論を行う予定です。

文責:汪 牧耘

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